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2009年6月10日 (水)

裁判員の教科書

 雨が降っています。昨日(9日)に九州南部は梅雨入りしたようです。

 橋爪大三郎さんの『裁判員の教科書』(ミネルヴァ書房、2009年)を読みました。橋爪さんは昔から注目して多くの著書も読んできた社会学者です。

 本年5月21日(わたしの誕生日)からはじまった裁判員制度については、多くの書物が誕生しています。本書は、その中でも読みやすく、また裁判員制度の解説を通して、わが国の刑事裁判制度の神髄を解説した良書だと思います。

 いま「刑事裁判制度の神髄を解説した」といいました。それは橋爪さんのつぎのような刑事裁判についての見方に表れています。

 「刑事裁判で裁かれるのは、検察官である」。(14頁。他の頁にも同様の表現があります)。

 本書は、刑事裁判で裁かれるのは検察官であり被告人ではない、という一貫した視点から書かれています。また「刑法は、裁判官にあれた命令です」(26頁)ともいいます。この二つの命題の真意は、この本のなかにあります。

 そこで橋爪さんによる裁判員の役割とは。「それは、眼を皿のようにし、聞き耳を立てて、検察官の言動に注意を集中することです。検察官が犯罪を立証し、被告人の有罪を証明しようとしています。これが成功しているかどうか、判定する。これが、裁判員の役目です」(71頁)。

 さらに本書の後半では、現行刑事裁判制度に対するいくつかの問題点も分析されています。そのなかで、平成19年から導入された被害者参加制度についての橋爪さんの見解が述べられています。被害者参加制度とは、刑事裁判に被害者やその遺族が参加し、証人尋問や被告人質問ができるというものです。この被害者や遺族の意見は、裁判員に影響を与えずにはおかないであろう、と橋爪さんは考えて、この制度に否定的見解を表明しています。いわく、

 「感情も、人間に自然にそなわったものなので、裁判に反映しがちです」(194頁)とした上で「感情は、正義とも、刑事裁判のルールとも、関係ありません。むしろ、感情が邪魔をして、正義がわからなくなり、ルールを逸脱してしまいがちです。というわけで、率直に言えば、被害者参加制度は、刑事裁判にとってお荷物以上のなにものでもありません」(同)。

 というわけで、いつものように収まりの悪い終わり方ですが、裁判員って、困るな~、と思っている方にお薦めの一冊です。なんといっても日本語がわかりやすい。この辺にも橋爪さんの思考力の高さが表れていると思います。

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