無料ブログはココログ

わたしの著書

  • 憲法Ⅰ 総論・統治機構論
  • 憲法Ⅱ 基本権論
  • 著作権と憲法理論
  • ロールズの憲法哲学

« 菊池伝説殺人事件 | トップページ | 帰省疲れ(長野に帰省No.4)。 »

2009年9月16日 (水)

運命の人(一)

 晴れ!30℃オーバーは必至!

 先日の帰省中に、山崎豊子『運命の人(一)~(四)』(文藝春秋社、2009年)のうち(一)を読みました。

 憲法を勉強した人なら「外務省秘密電文漏洩事件」としてお馴染みの事件を題材とした作品です。この事件は『判例百選』でも解説されていますので、裁判の概要はそちらを参照してください。

 「外務省秘密電文漏洩事件」の概要は、つぎのようです。

 1972年の沖縄返還の前に、米軍は基地として利用していた土地のうち、不要になった部分を、沖縄の住民に返還しています。ところが、基地利用のために取り上げるときは強制的に収用しておきながら、返還の際には、なんら原状回復することなく、つぶれ地やコンクリート舗装のまま、返還していました。このようななかで住民の激しい抗議にあい、米国は、1961年6月までに返還した土地については、その原状回復に資するために“見舞金”を支払っています。ところがそれ以降に返還された土地の原状回復資金は、支払われていないままでした。

 1972年の返還にあたり、米国がつくって沖縄に残していく資産(たとえば、琉球電力や水道など)や核の撤去費用、軍部隊移動費用などの名目で、日本は米国に多額のお金を支払います。ところがやはり衡平の原理からいっても、住民の土地の原状回復費用は米側に負担させるべきであり、住民運動、国内世論も、その論調にありました。ただ、米側は、資金がないことを理由に頑として、この要求を受け付けませんでした。このままでは、原状回復費用どころか沖縄返還自体が暗礁に乗り上げるかもしれないような状態だったとも。

 そこで米側は米国内法の規定をつかい「裏技」を提案します。その内容は本書を読んでください。いずれにしても、それは、不要になって返還した軍用地の原状回復費用を、日本側が肩代わりする、という内容だったのです。このやり取りを外務省は米国との交渉地から日本・外務省宛に「極秘」に電信します。この電信文を、毎日新聞の記者が、外務省の女性事務官と「ひそかに情を通じ」て入手したことが、国家公務員法違反(秘密の漏洩をそそのかした)として起訴されたものです。

 『運命の人(一)』では、この新聞記者の人となり、彼と外務事務官とが知り合いであった経緯、沖縄返還交渉と電文の内容、そして事情聴取(→のちの青天の霹靂のような逮捕状の執行)までが描かれています。もちろん、すべてが事実というわけではなく、ノン・フィクションに素材をとったフィクションですが、『大地の子』、『沈まぬ太陽』、そして『白い巨塔』と力強く話題作を提供している山崎豊子さんの筆の強さがここでも感じられます。

« 菊池伝説殺人事件 | トップページ | 帰省疲れ(長野に帰省No.4)。 »

読書」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/499918/31397262

この記事へのトラックバック一覧です: 運命の人(一):

« 菊池伝説殺人事件 | トップページ | 帰省疲れ(長野に帰省No.4)。 »

2017年4月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30