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2009年10月25日 (日)

The Lost Promise of Civil Rights

 曇りでございます(のち、雨が降りました)。学会出張、運動会を経て、久しぶりに自宅で過ごす日曜日になりました。

 ということでブログ・ネタがないので、「積読本」の紹介を。今日は、Risa L. Goluboff, The Lost Promise of Civil Rights (Harvard University Press, 2007) です。

 本書の著者 Risa L. Goluboff は、ヴァージニア大学の法と歴史学(法制史)の教授です。本書は、歴史学の Ph.D をもつ著者によるブラウン判決の歴史的意義についての実証研究です。

 合衆国では南北戦争後、奴隷制度が廃止され、合衆国憲法にも平等保護を目的とした条文が規定されたにも関わらず、南部では20世紀に入ってからも人種差別が横行していました。その原因は、平等保護の意味あいを曲解したプレッシー判決にあったのかもしれません。

 Plessy v. Ferguson (1896) は、人種分離制度それ自体は温存する判決内容をもちます。すなわち、学校、乗り物、レストランなどといった各種施設において黒人などの利用を拒否することは許されないのですが、黒人用/白人用を分離し、それぞれが同じ条件の設備をもつなら平等保護条項には違反しない、としたのです。いわゆる「分離すれども平等」なら許されるというのです。

 この「分離すれども平等」政策の容認を否定したのが Brown v. Board of Education (1954) です。本件は小学校での人種別学制を違憲とする判決を下し、以降、人種統合を目指して busing を実施したと聞きました。わたしが学部生時代にこの話を講義で聴き、英語辞書で busing を引いたことを思い出します。busing には「人種差別をなくすために黒人と白人の比率を適正化した人種共学を実施するための強制バス通学」という意味がるのです。

 本書はこのブラウン判決が出た当時の人種分離制度をめぐる訴訟状況や黒人労働者の生活環境から説き起こし、ブラウン判決のその後の合衆国社会に与えた影響を分析したものです。「積読本」なのでまだ中味を精読していませんが、この本にはつぎのような意義があると思います。

 公民権運動といわれて通常想起するその権利内容は、いわゆる参政権的なものだと思います。ところが黒人労働者の現実の生活を想起するなら、参政権的な意味での公民権ももちろん重要なのですが、なによりも政府による生活保障、労働者としての権利の獲得が重要だったのです。本書はエリート的な公民権運動ではなく、黒人、少数者が本当はなにを求めたのか、そしてブラウン判決以降の合衆国社会がその「声」に耳を傾けてきたのか、これらを再考する切っ掛けを与えてくれる本だと思います。 

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