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2010年2月11日 (木)

いまこそ『資本論』

 風雨の強い一日になりました。建国記念の日ですが、午前中に定期試験に関する業務が割り当てられていたため、出勤しました。

 定期試験に関する業務というのは「教務委員待機」というものです。この業界にいる方ならなんのことかお分かりでしょうが、定期試験中になにかあった場合に対処する業務ということです。奥歯に物が挟まったような言い方ですが、ようするに「不正行為」があったときに、事情聴取等の対応をする業務です。でもその発生件数はごく僅か(でないと困りますが)なので、事実上、研究室にいるだけです。ということで、研究室では週明けの修論審査のため、修士論文を読んでいました。

 修論を読み終えてさらに時間があったので、嶋崇『いまこそ「資本論」』(朝日新書、2008年)を読みました。

 嶋崇さんは雑誌編集者のようです。『資本論』専門家ではない方による入門書、実に分かりやすいものでした。

 嶋さんが『資本論』に注目する理由、それは「まえがき」冒頭に書かれています。

 「『誰もがヒルズ族になるチャンスがある!』などの言葉に踊らされてみたものの、現実にあるのは、アルバイトや派遣の仕事ばかり--。いったい今の世の中はどうしてこうなんだ?僕たちはどうすればいいんだろう?と考えている人に、再度注目してもらいたいのが『資本論』です」(3頁)。

 本書を読むと、なぜ資本主義だといまのような経済状況が生まれるのか、よくわかります。資本家というのは「特別剰余価値」(賃金を抑えることで利益=剰余価値を得るだけでなく、商品生産コストを下げることで得られる他者とのコスト差からの剰余利益)を求めるもの。だからそれを得るための手段、たとえば「中間搾取制度」(終身雇用をやめたり、派遣労働者を雇ったり)をとろうとしたり、大資本は小資本を吸収しようとしたりするようです。これ、いい悪いは別にして、資本家にとってはそれが合理的思考で、資本主義とはそのことを許す経済メカニズムということです。

 この資本主義にとっての脅威が社会主義でした。本書の解説者・村串さんは、つぎのおうに言います。

 「資本主義の暴走を許した大きな理由は、社会主義の崩壊である。・・・20世紀の初頭におきたロシア革命は、資本主義陣営を恐怖におとしいれた。資本主義陣営は、労働者に妥協し、労働組合の権利を拡大したり、社会保障制度を確立して、労働者の労働・生活条件を大幅に改善した。また経済政策では、独占的大企業の横暴をおさえる独禁法を制定し、資本主義の暴走を自制し、資本主義の延命に努力してきた」(212頁)。

 村串さんによれば、資本主義の暴走を制御していたのが社会主義で、その制御装置がなくなったあとに訪れたのが今日の社会状況であるというのでしょう。

 ただ社会主義が正しくて資本主義が誤っているというのでありません。村串さんのつぎの言葉は非常に重要だと思います。

 「それぞれの経済学は・・・あらかじめどれが正しくて、どれが間違っていると客観的に決めつけることができない。いずれの経済学、あるいは何らかの経済学にもとづく一定の経済政策は、国民の選択にゆだねられているわけで、経済学というものは、そうした政治的な選択にまかされるものなのである」(216頁)。

 ここでもわたしたちに負わされている役割は重要のようです。

 本書は1冊で文庫本13冊にも及ぶ『資本論』を解説するもので、わたしでも理解可能な入門書でした。お奨めの1冊です。

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