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2010年6月22日 (火)

裁判百年史ものがたり

 くもりです。小雨?

 先週末、夏樹静子さんの『裁判百年史ものがたり』(文藝春秋、2010年)を読みました。

 本書は、日本の裁判の歴史に残る12の判例を、推理小説家の目から紹介したものです。裁判の事実の概要や判決内容の紹介の仕方もそうですが、なにより事件の背景にある“人間物語”が、当代随一といえる作家の筆で語られているところに、読み応えを感じました。

 ところで、昨日の講義では「わいせつ表現」について、扱いました。事の性質上、興味をそそられるテーマのためか、学生の反応もよかったように思います。このテーマでまず扱われるのが、わいせつ性を定義した(わいせつ3要件を提唱した)「チャタレイ事件」です(最大判昭和32年3月13日)。これは1950(昭和25)年小山書店刊、伊藤整訳による、ロレンスの『チャタレイ夫人の恋人』がわいせつ文書であるとされ、刑法175条で起訴された事件です。ロレンスのこの本は、諸外国で翻訳刊行されやはりその違法性が裁判で問われているのですが、実際に有罪になったとは日本だけです。その理由について、本書ではつぎのように述べられています。

 「翻ってみれば、1957年から60年にかけて、日本を最初にアメリカ、イギリスで本格的な『チャタレイ裁判』の判決が出され、日本だけで有罪になったわけである。わずか3年の違いで〔日本での有罪判決が1957年、その後の3年間で英米がともに無罪判決を下している-引用者註〕、なぜ正反対の結果が生まれたのであろうか?

 それは、日本と米英とではわいせつ性の判断基準が異なったからであり、日本では『ヒックリン判定基準』に似た基準を適用したのに対し、米英ではそれを否定して、新しい基準を採用したからだという指摘がある」(142頁。参照文献省略)。

 講義では日本だけ有罪になったことには触れましたが、「ヒックリン判定基準」にはさすがに触れられなかったので、ここに本書を参照しつつ、「ヒックリン判定基準」を掲げておきます。

 この基準は、① 文書以外の外的な事柄、たとえば作者や出版社の執筆・出版意図などは、わいせつ性判定には考慮しない、② わいせつと思われる箇所が部分的にでも存在すれば、書物全体がわいせつ文書となる、③ 年少者への影響を重要視して判定する、というものです(142~143)。

 その後、修正わいせつ3要件が提唱され、また現在では相対的わいせつ概念によっていることなどは、講義したとおりです。

 本書は「チャタレイ事件」(第7回)以外にも、憲法学にとって重要な判例が紹介されています。たとえば、司法権の独立をまもった「ロシア皇太子襲撃、大津事件」(第1回)、平成7年改正前旧刑法200条に違憲判決が下された「悲しみの尊属殺人」(第9回)などです。

 この他にも有責配偶者からの離婚請求の是非についての事例を紹介した「離婚裁判、運命の一日」(第11回)、犯罪被害者やその家族・遺族が一人刑事裁判から取り残されていることをその当事者の視点から描いた「被害者の求刑」(第12回)など、法学初学者の方にも興味がわくであろう事件が、読みやすい筆致で紹介されています。

 これから定期試験が気になる時期になり、じっくり読書をするという感じではないかもしれませんが、夏休みにでも読んでもらいたい一冊でした。

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