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2010年7月 2日 (金)

ライブ・合理的選択論

 いまにも降り出しそうな曇りです。

 いま、小田中直樹『ライブ・合理的選択論』(勁草書房、2010年)を読み終えました。

 合理的選択論とは、経済学的アプローチにより、政治現象を説明しようとする試みです。そこでは私的なメリットとそれをえるためにかかるコストが重視されます。

 本書は、その副題(投票行動のパラドクスから考える)が示しているように、わたしたちの投票行動を合理的選択論で説明しようとしたものです。参議院選挙が近いということもあり、本棚から手に取りました。

 わたしたちはなぜ投票に行くのか。本書で展開されているダウンズ・モデルによれば、それは、投票のメリットがそのコストを上回るからだ、ということになります。ところが、投票に行くメリットとコストを考えてみると、普通に考えると、コストの方が上回ってしまう。投票率の低さを嘆く言説がちまた横行していますが、実は、実際の投票率はこの理論からすると「高すぎる」ことになる。なぜなら、投票から得られる私的なメリットは、きわめて小さいと考えられるから。でも、実際には50%程度の有権者は投票所に行っている。あれれ・・・(「ワケワカメ」← これ、本書によくでてきます)。この「投票のパラドクス」を解くアイデアが、本書ではいくつか紹介されています。

 さらに本書は、こういった一種の“オカタイ”お話を、ライト・ノベル仕立てで展開しています。ここだけを読んでも、とても面白い一冊になっています。もちろん、それを理論的に説明する本当に“オカタイ”部分もあります。そこも、著者先生のお人柄からか、合理的選択論ど素人のわたしにも、読みやすい解説部分になっています。

 憲法学は(また広く、法学は・・・、と法学一般のことをいっていいかわかりませんが)、「合理的人間」を想定し、理論展開しています。この「合理的人間」とは、理性的に行動する人格性あふれる人のことです。それは“人格的存在にとって・・・”とか○○の利益は“人格権として・・・”なんていう言説にあらわれています。でも本来、わたしたちは、それが自分にとって得になるか損になるか、を計算して行動していますよね~(って、これ、わたしだけではないですよね)。そう、「経済合理的」に行動する存在です。

 憲法学にとっても(広く、法学にとって、といっていいのかわかりませんが・・・)、人びとの行動を経済的アプローチをもちいて説明する合理的選択論は、大きな影響をあたえるものだと思っています。同じ法現象でも、説明の仕方が違うと、その見え方まで変わるものです。わたしにもう少し、経済学の知力があったらな、と常々感じています。

 わたしの師は、人間を人格的存在として、それにふさわしい権利が保障されるべきであると説く憲法学を“宣教師憲法学”と呼んでいます。それは“人間の尊厳”、“人格性”に根差す権利論がキリスト教思想を基盤とするものだからです。本当はそれを超える憲法理論を説かないといけないのですが、通説・判例を適切にレヴューすることで手一杯な講義では、それは難しいことです。

 なんだか、ブログを書いているうちに“暗~~い”気持ちになりましたが、それは措いといて、小田中さんの『ライブ・合理的選択論』は、政治現象のひとつの説明方法を会得するために格好の入門書だと思いました。

 【お知らせ】 熊大法学部HPの「学生リレーエッセー」と「教員リレーエッセー」がともに更新されています。ここからどうぞ

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