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2011年2月26日 (土)

日本の国会

 よく晴れています。が、明日から天気は下り坂の模様。

 そんななか、大山礼子『日本の国会 - 審議する立法府へ』(岩波新書、2010年)を読みました。買ってはおいたもののなかなか手が伸びることはなく、ようやく読み終えることができました。

 本書は、明治憲法下の議会から現在の「ねじれ」た議会まで、その審議体としての実像を、歴史的に、また比較法的に、そして理論的に、また実務にも目配りして描いた好著です。

 わが国の〈議会-政府〉関係は、英のウエストミンスター・モデルを範型として、制度化されてきたといわれています。ウエストミンスター・モデルというのは、簡単にいえば、下院の過半数をもつ政党が単独で内閣を組織して、その首班が強力なリーダー・シップを発揮して統治にあたる、という統治モデルです。そこで昨今、政治主導の統治を実現するために、その純粋形態を志向した改革が行われています。ところが本書は、日本の政治制度は、英とは異なり、首相の権限をチェックする「拒否権プレーヤー」が多数配置されている、といいます。そのひとつ(しかも強力なそれ)が「強い参議院」であるといいます。

 たしかに、かつては「参議院不要論」というのがありました。それは、政党化された参議院は、衆議院の「カーボン・コピー」に過ぎないので、という理由ででした。ところが、ここのところの「ねじれ国会」が、実はわが国の政治制度は、諸外国と比べても希有なくらい上院(参議院)に強い権限を与えている、ことを顕在化させました。そこで、今度は違う意味での「参議院不要論」が唱えられ始めています。それは、小選挙区制のもと、より直接民意を反映していると思われる下院(とその信任の下にある内閣)が実施しようとする政策を阻止する強い権限が与えられすぎている、というのがその理由です。

 本書は、わが国の政治制度がウエストミンスター・モデルとは、実は相当程度違うのだということを明らかにして、そのなかでわが国の政治制度、とくにあるべき参議院の役割などを述べています。

 ところで「憲法」には、形式的意味でのそれと実質的意味でのそれがあります。形式的意味の憲法といえば、平たく言えば、「憲法」という名前のついた法典のこと(わが国でいえば日本国憲法)です。イギリスにはこの意味での憲法はありません。

 実質的意味の憲法とは、国家の組織や権限に関する基本法、というのが一般的説明方法でしょうか。形式的意味でのそれとは異なり、実質的意味の憲法は、どの国家にも必ずあります。というよりも、そもそもこの実質的意味の憲法の効果により、国家が存在している(と思わされている)ともいえます。

 というのも、わたしたちは「国家が○○する」とよくいいます(たとえば戦争など)。これは国家さんという実在者が○○という行為をした、ということをいっているのではなく、実際にはある国家機関(についている自然人)が○○という行為をしたことをあらわしています。そう、実際に行為しているのは、実際に存在しているAさん(自然人)なのです。でもある国家機関の職についているAさんの行為は、国家の行為とされる。このロジックを成立させているのが実質的意味の憲法です。ぱっとみーはただの人であるAさんの行為が国家の行為である、なぜそうなるのかというと、このAさんの行為は実質的な意味での憲法の従った行為だからです。こういう「約束事」はどの国家にも必要です、というより、うえでいったように、こういう「約束事」があるからこそ、国家が存在している(あるいは、わたしたちは国家が存在していると思っている)のです。

 この実質的意味の憲法の例としては、通常、国会法や裁判所法などがあげがえるところです。が、これらの法について憲法の講義で詳細にとりあげることは、通常できません。ただ、実質的意味の憲法の理解は、憲法のとくに統治機構論を理解するときに非常に重要になります。本書は新書版で入手もしやすく読みやすいので、こういう実質的意味の憲法という考え方を理解するためにもよい本だなぁ、と感じました。

 【業務連絡】 ということで、わたしの親HP(obinatanobuharu.com)の“文庫と新書で憲法学”に追加しました。

 こちらからどうぞ。

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