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2012年1月 4日 (水)

戦後日本を狂わせたOSS「日本計画」

 曇っていて、風も強くて、寒~い。(のちに、雪も舞いました)。でも、やはり熊本の寒さは「甘い」寒さだった~。

 ということで、帰省の鉄路で、田中英道『戦後日本を狂わせたOSS「日本計画」』(展転社、2011)なる書物を読みました。

 日本国憲法制定の背景にはGHQ(その長官がマッカーサー)があることはすでによく知られていることだと思います。具体的には、GHQの民政局(その局長はホイットニー)という部署で、その作業は進められました。そのメンバーで、憲法制定の大きな役割を担った人たちに、ケーディス、ハッシー、ラウエルといった軍人弁護士がいました。彼らは、いわゆるニューディーラーです。

 ニューディール(政策)とは、世界大恐慌の対応としてルーズベルト大統領がとった社会保障政策(立法)のことです。疲弊した労働者を保護するために、労働時間規制や最低賃金法が実施されました。こうした政策の実施を是認する思想をもった人たちをニューディーラーといいます。

 ただ、こういった政策(立法)は憲法で保障される「契約の自由」を制約するものであったので、いくつもの違憲判決が出されます。合衆国憲法には、社会経済規制を明文で許した規定はないのです。そこで、こうした立法・政策が、「法の適正な手続(due process of law)」なしに自由や財産を奪ってはいけないとする修正14条違反であるとされたのです。

 はなしを日本に戻して、アメリカでは一時、敗北した社会経済規制を是認する思想でしたが、それがわが国の憲法に持ちこまれます。それは、なにを隠そう、ニューディーラーが憲法制定の中心的役割を担っていたからです。わが国の憲法には25条以下で、豊富な社会権規定があることは、みなさんもご存じの通りです。また、修正14条を継受したかに見えるわが国の31条ですが、そこには修正14条にはある「適正な(due)」という文言がありません。これは、社会経済規制がアメリカでは「デューな」法ではないので違憲とさたたことを受けて、ニューディーラーである軍人弁護士たちが慎重にも規定しなかったことも、いまでは有名なことです。

 ここまでの本書を読む前提知識を確認して、本書は、こうした日本国憲法制定にあたえた、フランクフルト学派の影響を説くものです。

 フランクフルト学派というのは、アドルノ、ホルクハイマー、ベンヤミンらに代表される哲学・思想一派のことです。1930年代にフランクフルト大学で彼らは活動していたのですが、ナチスの迫害から逃れるために、アメリカに亡命し、以後、彼の国で哲学・思想の普及に努めてきました。彼らの思想傾向は、マルクス主義に基づく批判理論である、とさえています。

 ということで、本書は、日本国憲法が受けたマルクス主義(フランクフルト学派、ニューディーラー)の影響を解明すると同時に、戦後史観、昭和史をみなおす保守派の書物です。保守派からすると、戦後の日本は、〈マルクス主義→フランクフルト学派→GHQ(ニューディーラー)〉によって、骨抜きにされたということなのでしょう。

 わが国は自由主義国家でありながら、多くの社会経済規制立法をもちます。その根拠は、先述している、憲法25条以下に社会権規定(社会経済規制を正当化する規定)をもつことにあると思います。もちろん経済的自由(22条や29条)も保障されていますが、こうした自由を制約する根拠が、すくなくとも合衆国とは異なり明文で、憲法上に存在するのです。

 ただ、こうした憲法規定の規範としての階梯は同一なのでしょうか。仮に同一だとすると、わが国は本当に自由主義国家であるといえるのでしょうか。こうした疑問を実は大学院時代に抱いていて、わたしはジョン・ロールズの「正義の二原理」を使って、規範階梯は異なるはずである、と考えました。(遠い目・・・)。

 おっと、読書感想を超えて昔話になってしまいました。ということで、なかなか読み応えのある保守派の書物でした。

 【最後に彩りとして】 鉄路いただいた駅弁を。(左)は創業88年、松浦商店さんの“味噌カツ”です。ビールによくあうガッツリ系のお弁当です。(右)は東京・名古屋・大阪の名物をちりばめた“特製幕之内御膳”です。おかずが豊富なのが、また、ビールにあいます。

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