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2012年3月 2日 (金)

最高裁の暗闘

 あめrainだす。

 山口進・宮地ゆう『最高裁の暗闘』(朝日新書、2011年)を読みました。

 近年の最高裁に「変化の兆し」があると本書はいいます。最高裁の判事が、民意を、ある意味で意識し始めた(あるいは、そのことを判決に反映させはじめた)現象を、本書は分析しています。

 また「少数意見が時代を切り開く」と副題にあるように、過去には少数意見に止まっていたものが、ときが経つにつれて次第に最高裁の多数派に受け入れられていく、あるいは、はじめは1人の最高裁判事の見解だったものが、討議をかさね(ときにたくみな表現を選ぶことで)判決に影響を与えるようになったこともある、というような、最高裁における判決(意見)形成過程について、コンパクトにまとめてあります。

 わたしがとくに興味深く読んだのは「調査官」と最高裁判事の関係です。最高裁判決は、最高裁判所調査官(という裁判官たち)の「調査」と「報告」に基づいています。ときにこの調査官の調査・報告が判決の結論を方向づけ、ときに最高裁判事に突き返されたりして、調査・報告内容を修正したりしていく模様が随所で描かれています。また首席調査官を務めた人がのちに最高裁判事なったりで・・・、そこには人間模様もうかがえます。

 重要な最高裁判決には、そのもとを作成した調査官による「調査官解説」というものが公表されます(まずは、法曹時報に、のちに法曹会が刊行している『最高裁判所判例解説 民事(刑事)篇』に収録されます)。わたしが学部学生の頃は、ゼミでは、この「調査官解説」まで読んできたものですが・・・。たとえば、猿払事件の香城敏麿調査官解説なんて、有名なものもあるのですが・・・。いまではLS生しか読まないのでしょうか(LS生で読んでいない人はよもやいないと思いますが・・・)。

 なんて感じながら読了しました。

 最近、最高裁判事による、あるいは、最高裁判事についての書き物が増え、そういう意味でも、最高裁に「変化の兆し」がうかがえます。そういえば、比較的最近の判例時報(平成24年2月21日号)にも、退官後間もない泉徳治元最高裁判事による可部恒雄元最高裁判事を追悼する文章が掲載されています。

 アメリカでは最高裁判決の背景にある各裁判官の思想・哲学がよく人口に膾炙されます。まだわが国ではこうした「判例分析」は根づいていませんが、最高裁判決にふされた個別意見の分岐を執筆裁判官の人となりなどから読んでみることも、面白い法学の勉強かもしれません。

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