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2012年3月 8日 (木)

国会運営の裏方たち

 くもり。春、来そうで、まだか。

 赤坂幸一・奈良岡聰智両先生編集の、今野彧男さんのオーラル・ヒストリー『国会運営の裏方たち:衆議院事務局の戦後史』(信山社、2011年)を読みました。

 衆議院事務局に長らく勤められ、戦後の議会運営に裏方として関わってこられた今野彧男さんへのインタビューをまとめられたものです。京大法学部の同期生(?)赤坂先生と奈良岡先生のお仕事に、まずは感服いたしました。

 どの本にもいろいろな読み方があると思うのですが、わたしはこの本のなかでとくに興味をもったのは、先例の扱いです。会議体での議事ではそのときそのときでさまざまな問題は発生しますが、そのなかで後の議事運営の参考になるもの(すべきもの)を先例として記録していくのが通例です。国会(正確には衆議院と参議院)にも『先例集』があり、そこに、のちの議事運営のために先例とすべきものが蓄積されていきます。ただ、日々の議事運営のなかでどれを先例としていくのかには、そのときどきの「先例集編纂者」の“目”が反映されます。また、『先例集』を改定してくさい、実体とは異なるものになったどの先例を削除するのか、そこにも「編纂者」の“思惑”が反映します。

 こうした先例の生成にどうして興味をもったかというと、国会の各院には憲法で議院自律権が認められています。これは、他の国家機関からの議会運営に対する干渉を許さない趣旨で各院に認められた権限ですが、この議院自律権を統制する規範として、先例、法規というのが存在しているからです。本書の161頁で赤坂先生が同趣旨の発言をされています。

 このように考えるなら、なにを先例としたのか、どうして先例となったのか、というとことにも憲法学は注目しなければならないはずです。二人の先生のお仕事は、これまでの憲法学では議論されてこなかったこうした問題を考える契機を学界全体にもたらしている点で、“大きな仕事”として評価されつつあります。

 また今野さんが議事部請願課におられたとき、当時まだなかった交通刑務所の設置に関する請願が「神戸の方からやって来る老人」からあり、その顛末についても面白い話しがあります。この老人は交通事犯者を一般の犯罪人と同じ刑務所内で同じように扱うのはおかしいとして、もっと開放型で教育刑的な措置をする刑務所を作るべきだ、という請願を何度も何度もするそうです。請願には国会議員の紹介がいるのですが、この主張はもっともなものですから、何人もの議員が紹介者に名を連ねてももらえたそうです。そうして交通刑務所が各地に設置させうようになっていくのですが、つぎはここ、つぎはここ、と場所まで指定して請願してくるそうです。今野さんがどうしてだ、と思ったら、その老人は不動産屋さんだった・・・、なんて話しが327頁あたりにあります。

 本書には姉妹編と呼べるものもあるので(いただいているので)、いずれ読みたいと思います。

 

 

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コメント

交通刑務所のくだり,初めて知る話で,大変興味深く拝見させていただきました。現在疑問に思っている,統計上累犯者という場合,なぜ前歴に交通事犯を含めないのかを考えるてがかりになりそうな気がします。情報提供,ありがとうございます。

とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。

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