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2012年12月18日 (火)

改正規定の改正。

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 さきの日曜日の第46回衆議院議員総選挙は、自民党(+公明党)の圧勝!におわりましたね。その選挙戦のさなか、いくつかの重要政策が宣伝され、そのうちのひとつに憲法改正がありました。きのう、あるTV番組をみていたら、安倍総裁の会見が放送されていて、憲法改正の第一弾として、“改正規定の改正”を考えているとのことでした。具体的には、現在は「両議院の総議員の3分の2」必要とされている国会での改正発議要件を「2分の1」にする、というものでした。

 わたし、こうみえても、学生の頃から憲法を勉強していて、“改正規定は改正できない”と教わったと記憶しているので、安倍総裁の発言を機にちょっと考えてみました。なぜ、改正規定は改正できないのかというと・・・

 憲法改正には限界があると考えられています(もちろん、無限界説もありますが、ここでは措いておきます)。なぜ限界があるのかというと、それは「憲法制定権と憲法改正権は、法理論上、別の権限である」と考えられているからです(憲法制定権は、ギョーカイ用語で「制憲権」とよばれています)。それはどういうことかというと、

 憲法制定権とは、なにものにもない状態で、憲法を制定する権限です。したがって、この権限を拘束するものはありません。この制憲権が発動され、憲法が制定されて、そして、お馴染みの立法権とか行政権とか司法権とかが「憲法上の権限」としてつくられるわけですが、これらの行使(発動)は、制憲権とはことなり、憲法の拘束を受けることになります。(わかりやすい例が41条の立法権の発動は59条に拘束されるというところでしょうか)。そしてこの「憲法上の権限」として、改正権という権限が制憲権によってつくられているので、この改正権の発動も憲法に拘束されます。それが96条です。今回の安部総裁の意見は、制憲権でつくった改正規定を、改正権で改正する、というものです。

 「制憲権/改正権」区別論にもとづく憲法改正限界論からすると、主権の所在とか基本的人権の保障という憲法の根本原理とともに、この改正規定は改正権では改正できないのでは、との疑問がうかびます。これについて、学部生時代に読んだ本をひもといたら・・・

 「特殊な問題として、憲法改正規定である第96条の改正を、第96条そのものによって根拠づけることができるかという問題がある。これに対しては、原則として不可能であると答えなければならない。なぜなら、・・・ 改正規定は、憲法制定権にもとづくものであって、憲法改正権にもとづくものではなく、改正権者が自身の行為の根拠となる改正規定を同じ改正規定にもとづいて改正することは、法論理的に不可能であるばかりでなく、改正権者による改正規定の自由な改正を認めることは、憲法制定権と憲法改正権との混同となり、憲法制定権の意義を失わしめる結果となるからである。」(清宮四郎『憲法Ⅰ〔第3版〕』〔有斐閣、1979〕411頁)。

 ただし、読み進めると、つぎのようにもありました。

 「ただし、改正手続による改正規定の改正を絶対に不可能とするのが憲法制定者の意志とは思われない。制定権と改正権との混同にならず、しかも改正権の根本に触れない範囲の改正、例えば、・・・ 国会の議決における『硬性』の度合いをいくぶん変更したりする程度の改正は、改正権者の意志に委せられていると解せられる。」(同書411~412頁)。

 ということで、安倍総裁案にいう“3分の2 → 2分の1”が硬性」の度合いをいくぶん変更する程度の範囲の変更といえるかというのが、法論理的な論点となると思います(政治的には、そんなの関係ねー、かもしれませんが・・・ちょっと、古いか・・・)。

 というのが、本日のゼミでのわたしのオープニング・トークです。

 【本日の問題】 ついでに、つぎのような問題も、ゼミではなしてみました。

 勢いあまって解散してみたものの、惨敗してしまったN総理。官邸には落選議員が押し寄せて、てんやわんやです。わずか生き残った閣僚をあつめて、善後策を考えるN総理のもとに、なぞの人物Oがあらわれ、こういいます。「なにシケタ顔してるんですか、総理!いっちょ、もう一回解散しましょう」。

 さて、先日惨敗してしまったN内閣は、いま、もう一度、解散することはできるのでしょうか?

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