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2015年2月13日 (金)

中島義道『東大助手物語』(新潮社)

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 定期試験もおわり(といっても、わたしは例年、後期には大講義をもっていないので、採点の「祭典」は後期にはない)、大学はしばし「静かな」時期になっています。

 で、中島義道さんの『東大助手物語』(新潮社)を読みました。

 わたし、中島義道さんのヘビーな読者です。といっても、よく読んでいたのは院生から最初に就職したあたりで、最近はそうでもありませんでした。

Dsc_2198 でも、なんとなく本の題名に惹かれて、一気に読みました。中島さんは東大助手時代に教授から「いじめ」られていたことを他の本で知っていたので。

 たしかに本書は、中島さんを東大助手(たぶん3年の任期付)にしてくれた教授にうけた「いじめ」がメインテーマなのですが、それをモチーフとして「大学とはどういうところか、学会とはどういうところか、そこで研究するということはどういうことか」(「あとがき」188頁)が「ありのまま」に書かれています。予想通り、そんなに「綺麗な世界」ではないのです。

 その一端を垣間見れるくだりが随所に見られます。たとえば、まったく思索していない人がいる、「50歳を過ぎたらまったく研究しなくなる学者は数限りなくいる」(15頁)というあたり。中島さんの「教授」もその一人で、昨年の論文は論文ではく「エッセイ」だと厳しく評価しています。また、その「教授」のことを「学問的には何もない、何もない」(147頁)とする大森荘蔵(哲学者、中島さんの師)の言葉など。中島さんの「教授」に対する態度の根底には、学問的軽蔑があったのでしょう。哲学思想系の学者の場合、その学問と人間とを切り離すことはできない。学問的に全否定している「教授」を人間として尊敬することはできない(137~138頁)と言います。

 そして、この学問を基底とした「教授」への評価は、衆人の一致するところなのでしょう。この「教授」の演習からは学生が1人去り、2人去り・・・で結局みんないなくなってしまったこと、20年も勤務しているのに、だれもこの「教授」を味方する者がいないことなど。なんだか身につまされました。さらに、大学における教員採用の基準は不明確であること(110頁あたり)や大学設置審における教員評価のこととか同期、同僚の業績・能力評価をめぐる嫉妬が妬みなど、ああ、「大人の世界」はいやですね~(笑)。わたしも随分と汚れてしまいました。

 ところで、本書のメインテーマは「教授」からうけた「いじめ」です。その背景にあるのが、教授が助手(院生)の就職の世話をする文化だと思います。就職できないと助手(院生)に能力がないだけのようにも思われるのですが、むしろ教授自体の失策しされるという文化があるようです(いまでは、あまりこれはないのでは)。本書でも夏にドイツに行くという教授宅の芝刈りを頼まれ(命令)ています。それをめぐって、あれやこれやと・・・。〈教授-助手(院生)〉間にはこういう関係がある(場合がある)のでしょう。そういえば、教授といえば、一般の人からすれば、大変な権威者でときに権力者でもありますよね。うちも博士学位審査のとき、実家の父が先生に「お礼」(大人のお礼はdollarであると思われる)いるのだろうか、とか言っていましたから。さいわい、わが母校にはそういう文化は皆無でした。が、当時、ありましたよね~、世間を沸かせていたことが。

 ただ、学問の世界における師弟関係は、一種の「徒弟関係」であるとは思われます。それは、いまでもそういうところが残っているとも思います。もちろん、そこには指導者への尊敬、憧れと、指導者による寵愛を介してのものですが。たとえば、わたしも先生に文献コピーのお願いをずっとされていました。ここだけ見れば、教授の下働きなわけです。ただ、それは、わたしにとっては、いま先生が何を読んでいるのか、何を思索しているのかを知る、そして、それを「学ぶ=盗む」絶好の機会なわけです。しかも、わたしはいつもコピーカードをわたされ、必ず「2部とりなさい」と言われていました。1部はわたし用なのです。有り難いことでした。

 こういう関係、いまは「ハラスメントの温床」とか思われがちで、したがって、指導らしい指導もしづらくなっているように思います。ただ〈尊敬と寵愛〉の関係に基づく指導であるなら、傍から見れば理不尽なことであっても一線を越えることもない、とは思うのですが。難しいところですね。いまは、そもそもなにかあっては困るので指導しない、という方向に行ってしまっているような・・・。

 なんて思いながら、本書を読みました。

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