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2015年9月13日 (日)

集団的自衛権はなぜ違憲なのか

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 NHK「日曜討論」みて、そのあと、木村草太さんの『集団的自衛権はなぜ違憲なのか』(晶文社、本年8月30日)を読みました。

 2013年の内閣法制局長官人事にはじまる今般の安保法制問題にいたるプロセスが、いまをときめく憲法学者・木村草太さんの文章により、時系列的に確認できる一冊でした。

 日本国憲法は、武力行使を原則禁止(9条)し、その例外として個別的自衛権(わが国に武力行使があった場合にそれを排除する)は認められている(13条、65条)、しかし、集団的自衛権(他国の防衛、わが国に攻撃がない状態での先制攻撃、軍事)を行使する権限は、わが国(内閣)には与えられていない(73条に規定されていないので)という木村さんの議論は、憲法の解釈に拘って昨今の問題に憲法学者として回答したものとして優れていると思います。

 また、そのこと以上に、本書は「集団的自衛権・・・」との標題でありながら、木村さんが憲法学者を目指した「原体験」や、憲法解釈とはなにか、そもそも憲法とは何のためにあるのかまで記述されていて、「憲法入門」としても読めるものとなっています。昨年、一世風靡した南野森先生の『憲法主義』(PHP研究所、2014)と併せて読んでもらえたら、憲法学人気も向上するのでは、と思います。わたしも、この2冊に学部生の頃に出会えていたなら、もっと純粋な心で憲法学できたのに、と思います。(もっとも、木村さんはもちろん、南野先生もわたしより下だったような・・・)。

 で、木村さんの本書にもどって、読書メモ。

 まずは、法解釈と政策論は区別しなければならないことを、端的にこう言います。「日本の国益を真に考えるなら、適切な法解釈の重要性を侮ってはいけない。・・・ 仮に、集団的自衛権の行使が政策的に望ましいとしても、現行憲法を改正しないで、それを容認することは問題外」(36頁)。

 そして、その法解釈に拘る重要性について、「『法』という技術は、人々が感情に流されそうなときに、冷静な判断に引き戻してくれる。・・・ 法は対象と適度な距離を採ることにより、激情に冷や汗を浴びせ、冷静な議論を導く効果を持つのである」(71頁)。「法律家は、社会の熱情から一歩引いたところで、冷たく理論的な突っ込みを入れる技術者である」(72頁)としています。

 また、「憲法の枠内での法整備を実現させるためには、提案者の発言から独立して、法案の文言を緻密に分析することが必要だ。そうでなければ、実際に自衛隊が活動する段階で、政府による勝手な法解釈を許し、『法治主義』による権力統制を不可能にしてしまうだろう」(150頁)とも。

 まさに、一者による統治がなされないように、立法者と法解釈者は分離されなければならないのです。権力分立の要請するところでもあります。

 なお、ゲームのルールをゲームのプレイヤーが変更してしまうことの不正について、つぎのように言います。 「〈集団的自衛権行使容認のための解釈改憲〉を認めることは、単に、〈集団的自衛権は行使できない〉とのルールを変えるだけではない。〈政府は、ゲームのルールを変更してはならない〉というルールを変更してしまうのである。後者の〈ルール変更のルール〉が破壊されれば、政府の判断で、立憲主義を破壊し、民主主義を制限しても何ら問題がないことになってしまう」(124頁)。

 ほんと、頭が下がります。木村さんの解釈論のすべてに賛意を表するものではありませんが、「日曜討論」に出たり「報ステ」でコメントしたり、ほんと、立派です。憲法学界に「新人類」(旧いか?)到来でしょう。

 そして、さいごに「政府の行動を辛抱強く監視し続けるには、冷静な理論を身につけることが不可欠だ。(原文改行)憲法学の議論は、多くの国民が感じている政府への直感的な不信感に、理論としての形を与える。ぜひこれを共有して、これからの日本がよりよい方向に進むよう、政府を監視するために役立ててほしい」(270)という言葉で締めくくられています。

 わたしにも、わたしなりの憲法論は一応はあるのですが、彼のような憲法学者がいる反面で、もう恥ずかしい限りです。もっと精進しなければ、ですね。

 本書には、哲学者・國分功一郎さんとの対談も収録されています。これ、実に読みやすく、かつ、平明な言葉で本質を鋭くついているとも思います。たとえば、國分さんは、民主主義を背景とした権力の暴走を抑えるのが立憲主義である(198頁)と、立憲主義と民主主義との間にある「ある種の対立」に、非常に明快にアプローチされています(200頁)。

Dsc_3055 國分さんのもの、何冊か書棚にあるので、これから随時、読んでいきたいと思います。まずは『哲子の部屋』3部作から・・・

 それはそうと、2013年の内閣法制局長官人事から昨年(2014年)の「7・1閣議決定」を経て、2015年(ことし)の安保法案提出という一連の「安保法制騒動」で、本書、木村草太『集団的自衛権はなぜ違憲なのか』(晶文社)が世に出たということは、ある種の奇貨ではないでしょうか。ホント、よく書けている、というのがわたしの読後感です。

 件の安保法案は、参院で今週中にも採決されるとのこと。かりに採決されなくても「60日ルール」が成立します。つぎは、実際の適用・運用の場面です。曖昧な法文が違憲的に適用されないよう、憲法学者の端くれであるわたしも、微力ですが、監視していきたいと思います。

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コメント

ブログ記事中、
>(72条に規定されていないので)

とありますが、これは73条の間違いではないでしょうか。(私は、本書は未読ですが。。。)

いきなり失礼致しました。

73条の間違えです。ご指摘、ありがとうございます。

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