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2017年4月20日 (木)

憲法Ⅱ(第4回)。

 cloudsprinkle。午前様からの午前講義。ちょっと疲労気味で失礼しました。

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 ということで、告知のあとは、きょうの第4回目の「憲法Ⅱ(統治機構)」のレビューをします。

 (0) いつものようにSBSから。

 ① まず、前回講義(第3回)のレビュー(4月17日付(2)(ⅲ))でもふれましたが、マッカーサー三原則のうちの封建制廃止に関する「財産権の社会化」について。日本国憲法が施行されていたとはいえ「農地改革(農地解放)」では「土地所有権の社会化」が実施されたといえます(1946年制定の自作農創設措置法による)。この「財産権の社会化」の意味ですが、一言でいうと、財産権を政府が強制的に収用して、しかし、その損失を(僅かしか)補償しないこと、と講義しました。これ、本来なら憲法29条1項が禁止している「私有財産の公有化」にあたると思われるので、占領下という特殊な状況下でのものとして理解されるべきであるとしました。

 そして、こういった「財産権の社会化」、「私的財産の公有化」を日本国憲法は禁止していて(29条1項)、この点において、わが国の憲法は経済自由主義(資本主義)を採用していると、わたしは理解しています。つまり、わが国の憲法は上のような財産権規制を許す社会主義憲法ではなく、かりにわが国が社会主義国家になるなら、憲法29条を改正する必要があると思います。

 ② 同じくマッカーサー三原則との関係で「天皇制存続」について。これ、なぜ天皇制は維持されたのか、とい質問が複数ありました。これについてのわたしの回答は、西欧諸国の為政者が統治の安定のために「宗教の社会統合機能」を巧みに利用しているのになぞらえて、GHQはこれから日本の占領統治を実施するにあたり、わが国では西欧の宗教の役割を天皇の存在、または、天皇制が果たしていると見抜いて、だから、象徴として天皇制を残すことで自らの占領統治をしやすくした、としました。「天皇の社会統合機能」を巧みに利用して占領政策を実施していったのです。

 このように、まず、わが国は一般に無宗教国といわれますが、その代わりに社会統合機能を果たしているものとして天皇の存在、天皇制がある。この社会統合機能をときの為政者は巧みに利用している。したがって「天皇の政治利用」には要注意であると講義しました。このことについては、まだ講義ではお話していませんが、青本P76にある【特別会見と「30日ルール」】を読んでみてください。

 それから、西欧諸国でも見られるように、為政者は「宗教の社会統合機能」を巧みに利用して統治をしています。ということで、これは、昨年の憲法Ⅰでお話ししたように、政教分離原則は、統治の正当性を分析する上でも重要な法原則であると考えられます。政府と特定の宗教団体との過度の結びつきは、やはり要注意です。

 ③ もうひとつ、明治憲法における統帥権の独立条項(11条)と軍部大臣現役武官制により、統治が軍部の意向に左右されるものになっていったことも復習的に講義しました。

 明憲11条は「天皇ハ陸海軍ヲ統帥ス」と規定しています。この条項は、天皇の軍事権限に議会関与を許さない(いわゆる大権事項とする)根拠とされました。また、軍部大臣現役武官制は、陸軍大臣及び海軍大臣を現役の大将・中将に限るとすることで、内閣に軍部の意向を直接反映させると同時に、軍部の意向に沿わない政策を実施しようとした場合には軍部大臣の退任をちらつかせる(退任後の後任を軍部から得られなければ内閣総辞職)ことでやはり軍部の意向のつよい内閣が形成されることになりました。

 こうして、明治憲法体制の後期には、国務のうちの軍務については、議会そして内閣の統制が及ばない、軍部の独走を許してしまうものになってしまったのです。

 きょうは、SBSをすこし丁寧に解説したので、講義の本体部分はあまり進みませんでした。ごめんなさい。で、本体部分でレビューすべきところは、、、

 (1) 日本国憲法制定過程の歴史的事実を確認しました。青本P36~P37をもう一度、読んでください。そこでは、当初は日本側主導で憲法改正を実施しようとしていたものの、極東委員会が立ち上がるまえに日本の占領統治をはじめたいと考えたアメリカの思惑やいわゆる松本委員会の改正案が毎日新聞のスクープにあい、その内容があまりにも保守的だったことから、GHQが主導して憲法改正を実施することになった経緯について記述していあります。

 そのさい、「押しつけ憲法論」とはなにか(青本P37)とか、日本国憲法に社会権条項(それは財産権制約の論拠の明示)と国務遂行に「適正さ」を要求している適正手続条項(憲31条)から慎重に「適正」の文言を抜いていること(ロックナー判決の経験)からマッカーサー元帥は「社会主義者」であったのでは? なんてお話もしました。余談とはいえ、とくに後者は日本国憲法制定の背景にあり、いまなおわが国の基本方針(Constitution)の重要な一部を占めている実質的平等保護の観念に大きく影響している法理論です。

 (2) で、最後に「日本国憲法制定の法理」と題して、憲法改正に限界ありやなしや、の問題を検討しました。そのうち、きょうは、時間の都合で、憲法改正に実体的限界(内容的限界)があるか否かについて学説の分岐を紹介しました。内容的限界とは、たとえば、国民主権原理や平和主義は憲法改正できないのではないか、というものです。

 ① まず、憲法改正を定義したあと、憲法とは、憲法制定権(制憲権)者によって制定された法である、ということから説明をはじめました。これから憲法を制定しようという場面を想起すると、まだ憲法がないのだから、制憲者はどのような法にも拘束されないで、憲法制定権を行使し得る。そして、制憲権を発動して憲法を制定し、憲法上の権限としてたとえば立法権とか司法権とかを規定しその権限を国会や裁判所という国家機関に帰属される。このとき、同じように、憲法改正権という権限を憲法上の権限として規定し、その権限を国会と国民(国民投票を通じて)に帰属させている。

 こうして憲法が制定されると、その後は、実定憲法上の権限(立法権、司法権、、、改正権など)は、憲法の規定・手続に従って行使される。つまり、改正権の行使は、憲法上改正規定の拘束(国会両院総議員の3分の2以上による発議、国民投票過半数)をうけている。ということは、憲法を制定する権力と憲法を改正する権力は、その法力(権力としての力)に差があるはずである制憲権/改正権)。

 ② これを前提知識として、憲法の実体(内容)の改正に限界があるか否か(改正できない条文があるか否か)については、

 (ⅰ) 改正規定に従いさえすれば、憲法改正権に実体的限界はないとする、憲法改正限界「否定説」があることを説明しました。この説は、改正規定によれば、憲法が依って立っている「国の基本方針(Constitution)」をも改正できるとするところに特徴があります。

 (ⅱ) これに対しては、手続的とはいえ法的拘束をうける改正権は制憲権とは別物であることを起点にして、憲法改正には実体的(内容的)限界があるとする、憲法改正限界「肯定説」があると説きました。

 ③ で、わたしの見解はというと、たしかに、手続的拘束と実体的拘束は別ものとはいえ、「手続/実体」の相対性に鑑みるとき、憲法改正権に対する手続的拘束は何らかの実体的拘束を内包する(したがって、憲法改正に内容的限界がある)とするものである、とも述べています。

 そして、では、日本国憲法の何か改正の限界にあるかについては、それは主権の所在(誰が主権者であるのか)が改正の限界であるとしました。

 憲法制定の第一義は、主権者を確定させ、同者が行使し得る権限を憲法上に規定することで、同権限の行使を形式的にも手続的にも制限することである、とこの講義では説いてきました。したがって、主権の所在(誰が主権者であるのか)は、その憲法においては重要な形式(価値ではない)にあたるものです。価値依存的ではないわたしの憲法の見方もここに出ていると自分では思っています。

 ということで、日本国憲法の基本的な価値とされているものは論者によってまちまちでしょう(基本的人権の尊重である、平和主義もである、国際協調主義もだ、など)。そうだとは思いますが、それでも、憲法改正権の限界はこうした特定の価値ではなく、憲法の第一義、それは、主権の所在にある、とわたしは考えています。

 次回は、この議論の延長線上にある「憲法改正規定を改正規定で改正できるか」(うーー、👅かみそう)の問題を扱ったあと、象徴天皇制についてみていこうと思います。

 

 

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