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2017年4月17日 (月)

憲法Ⅱ(第3回)。

 rain 本日はお足もとの悪いなか、憲法Ⅱの講義にきていただき、あつく御礼もうしあげます。

 では、本日の2限目のレビューをします。

 (0) SBSではいろいろお話ししたのですが、やっぱり、憲法は「価値中立的」な法規範である、という点を再確認してほしいと思います。それは、特定の「よい」というもの(「よい状態」とか「よい生活」とか)を構想して憲法は解釈適用すべきではない(されるべきでもない)というものです。「よい」を実現していない政府は「悪い政府」であるというのを実体的統制としましょう。

 では、憲法はどのような法規範であるのかというと、国家機関の権力行使を形式的、手続的に統制する法規範であると思います。それは、たとえば、法律の制定という権力行使について、権限ある国家機関の提案からはじまり、審議・議決、署名・連署等、それぞれが適正になされているか、そして、議事手続が法令に規定されているものに則っているか、そういった点を憲法は規定しているのである、というものです。

 で、そうではなく、憲法は一定の「よい状態」や「よい生活」の実現を政府に要請しているはずであると憲法を解釈適用しようとするものを「価値依存的」と表現しました。ただ、すべての人びとにとって「よい」とされるものは画一的に存在しているとは思われないので、「よい」とされるものは、常に特定の個人や団体にとっての「よい」ものにならざるを得ないであろう、とも注意喚起しました。

 憲法条文をよく読めば、国家は××、△△してはいけない(消極的規定)と規定しており、政府は〇〇しなければならない(積極的規定)とする規定は例外的(で抽象的)である、ということも講義しました。やはり、憲法は特定の価値を信奉する法規範ではないと思います。

 (1) 講義の本体部分のはじめは、前回の続きで「明治憲法の特質と病理」をお話ししました。

 ① 特質(もいろいろとあると思うのですが)、ここれは、とくに大臣助言制が重要です。その仕組は、明治憲法55条にあるとおり、明治憲法下で制定されるすべての法律、勅令、詔勅等には、国務大臣の署名を要するとすることで、天皇の権力行使を抑制するものです。その意義としては、天皇が直接大臣を任命し、その助言、進言により国政運営するという点においては天皇親政的制度であるが、反面で、その国政運営に誤りあるときには、担当大臣を批判することで間接的ながら天皇の統治の責任を問う憲法上の制度であることも、講義では説明しています。大臣助言制を中核とする立憲君主制は絶対王政とは違のです。

 ② 病理としては「統帥権の独立」(明憲11条)について解説しました。「統帥事項」については議会や内閣の関与が許されない事項とされたために、軍務に関しては統帥権発動を擬制した軍部による独裁的慣行を許してしまったのであると。

 で、講義中に紹介した田原総一朗さんの本がこれです。軍部も官僚組織、その生態が戦争を生んでしまったことが書かれています。

 (2) 講義の後半では、戦争に負けたわが国にまっていたGHQによる占領政策において、もっとも重要な課題であった明治憲法の改正(日本国憲法の制定)に関するマッカーサー・ノートについてとりあげました(プリントP7です)。

 マ・ノートには、① 天皇制の存続、② 戦争放棄、戦力不保持、交戦権否認、③ 封建制廃止、貴族制改革が唱えられており、このうち、解説が必要だと考えた③について、つぎのように分説しました。

 (ⅰ) 戦争の経済的基盤であった財閥の解体

 (ⅱ) 階級社会、特権階級の廃止。これは、あまり参照される条文ではありませんが、憲法14条2項・3項で実現しています。

 (ⅲ) 農地の特権的所有制度を改革するための農地解放。昭和28年の最高裁大法廷判決は、この農地の一種の「社会化」(国家による公法的規制。私有地を公有したあと安価な払い下げ)の是非が争われた事例でもありました。こういう私有財産の「社会化」は、日本国憲法がすでに制定されていたとはいえ占領下であったことによるもので、本来なら、29条1項が禁止しているのは、このような私有財産の公有化である、とも講義しました(このことは、昨年の「憲法Ⅰ」でも講義しました。緑本のP252も参照してください)。

 (3) この他にも、太平洋戦争に関連して、戦争とは宣戦布告にはじまり終結条約に終わる法状態のことであるから、1945(昭和20)年8月15日の「終戦の日」も重要な日であるが、国際法上は、同年9月2日の米戦艦ミズーリ号上での「降伏文書」調印が終戦協定にあたること、そして、その後、わが国はGHQの軍隊による占領下にはいるが、1951(昭和)年9月8日調印の「サンフランシスコ平和条約」の発効(翌年4月28日)により、わが国は主権を回復したことを論じました。

 ということで、次回(第4回)には、いよいよ日本国憲法制定過程お話しをして、象徴天皇制とは何か(第1条の解釈)に入ろうと思います。

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