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2017年12月 3日 (日)

演習Ⅱ(後期第5回)。

 sun

 前回の4年生のゼミのレポートです。

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 満を持して?(笑)今回ブログを担当させていただきます、M・Sです。偶然にも今回の発表は自分の班で、テーマは「ホームレスの人の人権」でした。

 具体的にはホームレスの人の人権が問題となる事案として2つを挙げて発表しました。

 1つ目は、ホームレスのごみの持ち去りの事案です。まず廃棄物処理法は一般廃棄物(古紙、ビン、空き缶等再利用の対象となるもの)のごみ置き場からの持ち去り行為を禁止していません。しかし、多くの自治体では、ごみのリサイクル業は地方公共団体が統括しており、条例で一般廃棄物の「ごみ置き場」からの持ち去りを禁止し、かつ命令に違反すれば罰則を科しています。ホームレスが同様の規定に違反して起訴された場合、どのような憲法上の主張をし得るかが問題となります。この事例は世田谷区清掃・リサイクル条例事件(最判平成20年7月17日)がリーディングケースとなっています。

 主張の仕方は様々ありますが、特にホームレスの実態を考慮した主張として、同規定がホームレスの人の営業の自由(憲法22条1項)を侵害しているといったものが考えられます。ホームレスは空き缶等を回収し業者に売り渡すことで生計を立てているという実体があります。同規定は事実上これを不可能にするものです。ただし、事案の解決としては従来の規制目的二分論に基づき積極目的規制に対する緩やかな基準(明白性の原則)を適用し、規定は合憲であるとの結論が想定できます。

 しかし、本件のような条例が本当に積極目的規制といえるのか、そもそも規制目的二分論的な解決方法が本件事案において妥当といえるのか、条例の目的が環境・衛生の保全や地方公共団体の財源確保であればこのような規制が許されるのかのような疑問が残ります。

 2つ目は、ホームレスが公園にテントを張って生活していたとき、自治体は公園の整備のため、「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」に基づきテントの除去を命令し、これに従わなかったことを理由に強制執行が予定されたとします。ホームレスの人はこれに対していかなる憲法上の主張をし得るでしょうか。

 これに対して、まずはテントの除去が憲法25条に反するとの主張が考えられます。しかし、25条の考え方において有力である抽象的権利説では、生存権はあくまで抽象的な権利にとどまり法律による具体化が必要です。すると例えば、本件のホームレスの人がテント住まいで住所不定であることを理由に生活保護申請が拒否された場合は、拒否処分を25条違反と構成することが考えられます。少し横道に逸れますが、生活保護申請の要件として住所の記載が設けられています。そして、ホームレスの人は多くが住所不定です。ただ、ホームレスの人こそ広く生活保護費受給の対象となるべきでしょう。ホームレスの人が生活保護を受給するためには、自立支援センターのような施設に入ることが必要となります。ここでは、時間や規則を守り集団で生活しなければならないため、そのような生活に耐えかねてホームレスに逆戻り・・・のようなこともあるようです。ホームレスの人を想定した生活保護制度の更なる改善が求められます。

 次に、ホームレスの人には居住の権利があり、代替措置なくテントの撤去を命じることは憲法13条を根拠とする生命権、健康権の侵害であるとの主張が考えられます。本件では、行政側がホームレスの人に対し、一時宿泊施設への移動を勧告していたため、この主張は厳しそうですが、それでも一時宿泊施設の質が不十分であり代替措置として適切でない、テントより劣悪な環境であるとの主張も考えられ、方法としてはあり得るのかなと思いました。ただし、この場合にはそのような代替措置をする義務が行政側にあるのかは依然として問題となります。

 少し事案から離れますが、テントの除去ではなく、公園からの立ち退きが行政から命じられた場合に、ホームレスの人には13条を根拠にした「野宿の権利」があり、正当な理由のない立ち退き命令は違憲であるという別の観点からの主張も考えられます。ここでは、ホームレスを公園から追い出すに足る正当な理由とは何かが重要となります。

 ホームレスの人達は行政に対しいかなる支援を求めているのでしょうか。そもそも今の生活を行政に改善してもらいたいという意識はどの程度あるのでしょうか。日本のホームレスの方々の多くは、自らの工夫で生活環境を整え、生活保護の対象者であったとしても受給を断る傾向にあります。そう考えると生存権的主張よりも営業の自由を根拠とした主張や、野宿の権利の主張がホームレスの人達の意思と実態に合致し、現状の生活を維持するための効果的な主張ができるのではないかと考えます。

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